第1回:二足歩行の人間にとって腰痛は宿命なの?

S 最近、周りに腰痛持ちが多いんですよ。私の友だちはだいたい40代、50代ですから、年齢ですかね?

川尻 誰かが年齢のせいって言ったの?

S いえ。でも、なんか、ほら、そういう通説があるじゃないですか。人間は二足歩行だから腰に負担がかかっている、とか、年齢とともにいろいろ痛くなる、とか。

川尻 あのな、ワシは身体の専門家やねん。だから、まず絶対「年齢だからしょうがない」とか「加齢のせいです」とは言わんねん。

S え、じゃあ、年齢のせいじゃないんですか?

川尻 断言するわ。年のせいじゃない。もっと言えば、腰が痛いとき、腰そのものがどうにかなっているわけでもない。腰痛の実体とは腰の痛みが脳に送られて「痛い」って感じてるんじゃなくて、脳から「腰が痛い」っていう信号を出しているだけやねん。

S 腰が痛いから痛いって感じているわけではなくて、脳から腰が痛いっていう信号が出ている…? 分かるような分からないような…。

川尻 昔は体のどこかに痛みがあって、それを痛みとして脳が感知するとされていたけど、最新の痛みの科学でそうでないことが分かってるねん。

脳って、今、こうしている瞬間もあらゆる情報を受け取って、処理して、適応してんねん。筋肉の緊張やったり、温度やったり、関節の位置やったり、そういう全部の情報が入ってきて、その結果として脳から「腰が痛い」っていう信号を送り出してるっていうのが最新の痛みの科学やねん。

俗に「痛覚」と呼ばれているものの正式名称は「侵害受容器」。侵害っていうのは痛みとは違って、英語に置き換えるなら「Threat(脅威)」や「Danger(危険)」。日本語で簡単に言えば「やばいよ」やね。つまり、侵害受容器というのは「やばいよ」受容器っていうだけで、別にそれ自体は痛みではないねん。で、「やばいよ」っていうのは、どこかに「やりすぎ」があるよっていうことや。

ただ、全ての感覚はやりすぎると痛みになる可能性があってな。例えば冷たすぎても痛くなるし、熱すぎても痛くなるやろ? だから、体の、例えば、腰なら腰が「侵害受容」を受け取って、その情報がたくさん脳に送られると、最終的に「痛いですよ」というメッセージがくる。だから、痛みっていうのは「やばいよ。いま何かをやりすぎているよ」ということ。もっと突っ込めば、「だから、いまやっていることを変えなさい」っていうメッセージやね。

S イメージとしてはこんな感じでしょうか…。

1_Picture

 

S で、「やばいよ。やりすぎがあるよ」って、何をやりすぎているんでしょう?

川尻 それが内臓的なものなのか、体の動かし方や動作の問題なのか、理由はさまざま。脳がいま感じ取っている全ての情報の結果として出てくるわけやから、栄養とか睡眠も関係あるし、家族の問題や職場の人間関係のトラブルも関係あるし、全てが関係あるねん。

そういうのを総合して診て、どの要素がどのくらい影響しているかを見極めていくのがワシら専門家の仕事やな。

S 以前、ストレスが腰痛に関係しているっていう話を耳にしたことがありましたが、先生の話を聞くとその理由がよく分かりますね。

川尻 せやろ。なんで腰痛を訴える人が多いかっていったら、加齢じゃない、みんな「やりすぎ」。ストレスフルなだけや。

S ただ、その理屈で言えば、「やりすぎ」たときに痛くなるのは必ずしも腰とは限らないですね?

川尻 そうやね。ただ、体の中でも腰は特に痛くなりやすいというのはあんねん。

人が腰痛になりやすい理由とは

S 体の中でも腰は痛くなりやすいのは、なぜですか?

川尻 それには大きく2つの理由があってな。まず1つめとして、さっき言った「侵害受容器」が関係している。

受容器っていうと難しいので感覚受け取るセンサーと考えよか。感覚を受け取るセンサーは、大きく2タイプあって、ひとつは「触れられた」というセンサーで、もうひとつが「やばいよ」のセンサー。

で、体の中で2カ所だけ「やばいよ」のセンサーが多い場所があって。それが、目の表面と腰やねん。だから、すごく簡単に言うと、「やばいよ」センサーを受け取りやすい分、痛みを感じやすいわけ。

S もう1つの理由は?

川尻 人間、腰が痛くなると何もできへんやん? だから、いまやっていることを変えさせやすいねん。

例えば、手首が痛くなったとするやろ。それも「やりすぎ」「やばいよ」サインで、いまやっている何かを変えろっていうメッセージやけど、手首が痛いくらいでは生活にあまり支障なく、これまで通りのことができるやん? だけど腰となったら対応するしかないやろ。

S なるほど。でも、椎間板ヘルニアみたいに、体の状態として異常がある場合はまた別の話ですよね?

川尻 いや、腰が痛いことと、腰に何か物質的、器質的に問題があることは一切関係ないで。

S えええええ!?

川尻 失禁や、両足の痺れといった症状がある場合の腰痛はヘルニアが関係している可能性はある。けど、ただ腰が痛いという症状だけで、MRIを撮ったらヘルニアがあったからといって腰痛の原因はヘルニアと断定することは本来はできないはずやねん。

というのも、腰痛持ちでなく普通に生活しているその辺の人、100人くらいを集めてMRIを撮ったら、たぶん50歳以上の人の半数以上がヘルニアやねん。そんなリサーチが山ほどあるねん。つまり、痛いっていうことと、その痛い箇所に問題があることは一切関係ないってことが分かってきてるんよ。

S いろいろ衝撃です。腰痛といえば、年齢か、ヘルニアか、姿勢が悪いせいだって思い込んでいたので。

川尻 姿勢ね。姿勢は絶対に無理に正しちゃダメよ。

S ええええ!?

腰痛を治したかったら、正すのは姿勢じゃない

川尻 試しに、良い姿勢をしてみ? 

S はい。こうですか?

川尻 どうや?

S  …ずっとやっているのはつらいです…。

川尻 せやろ? あなたの体にとって、いま一番ラクな姿勢がいまの姿勢なわけ。だから、無理に胸を張るとか、そんなこと考えたらダメ。

S では、どうすれば?

川尻 さっきの脳の話と同じ。いまのあらゆる情報を脳が受け取って、そのうえで「この姿勢でいきましょう」とやってるんやから、姿勢だけ無理矢理変えようとすることは、体にしてみたら「いまベストなことをやっているのに、何してくれるねん」となるわけ。じゃあ、うすればいいかっていうと、脳に入ってくる情報を変えなあかん

S 脳に入ってくる情報を変えるって、例えばどんなことですか?

川尻 例えば、エクササイズで本来動くべき筋肉を動くようにしたり、横隔膜を動かすようなトレーニングをして腹腔の内圧を変えるとか。体の部位がそれぞれ正しく働けば、無理せんでも、良い姿勢に、自然に、無意識になるはずやねん。

この話をしていて思い出したけど、よく「腰が張っている」とか言うやん?

S はい。私もまさに。

川尻 勘違いしがちなんやけど、張っているって言っても、そこの筋肉が物質として固くなっているわけではないんやで。単に脳から「固くなりなさい」っていう指令が出ていてそうなっているだけやな。

うちでは、横隔膜をきちんと使えるようになるために風船膨らますエクササイズをよく教えるやるんやけど、それでちゃんと横隔膜が動くようになると、脳が「あれ、横隔膜が動いて、腹の圧が安定できそうだから、腰に力入れなくていいわ」ってなって、腰が緩むの。

S  へぇ!ということは、いくら腰をもんでも、脳に入る情報が変わらなきゃ、緩まないってことでもありますね?

川尻 そうそう。だから、極端なことを言えば、腰痛を治したかったら、おいしいものを食べたり、好きな景色を見に行ったり、楽しいことをした方がいい。要は脳のストレスレベルを下げることをするのが大事やねん。ストレスというのはメンタルな部分だけでなくフィジカルな部分も含めて。

というわけで、今回の質問の結論としては、腰痛には二足歩行だとか加齢だとかはまったく関係ありません。腰痛は、いまやっていることを何か変えなさいというサインです

 

このブログでは、皆様からの質問や疑問を募集しています。今回のトピックに関する質問でも、川尻先生に聞いてみたいことでも何でもかまいません。ぜひコメント欄にご記入ください。個別回答はできかねますが、今後、ブログのトピックとして川尻先生にぶつけ、回答していただくつもりです!

 

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