第5回:現代医療のベースは解剖生理学、代替医療のベースは?

S いやー、前回の更新からずいぶん間が空いてしまいました、すいません。

川尻 ワシはええんやけど、どうしたん? 忙しかったん?

S はい。でも、すごく忙しかったのにもかかわらず、時折悩まされていた胃痛がこの数カ月全く出ていないんですよ。

川尻 よかったやん。

S はい。わたしは、密かに「川尻マジック」と言っています(笑)。

川尻 ははは。でも、マジックやないで。ワシが話しているのはどれもちゃんと科学が進化して分かってきたことやねん。

S そうそう、今回のテーマはそれに関しての疑問です。前にもちょっと聞いた気がしますが、なんで、その新しい科学は現代の医療に取り入れられていないんでしょう?

川尻 おー、そこに食い込んできたか…これはエラい気を使う話になりそうやな。最初に言うておくけど、ワシは現代医療がダメだと言っているわけやないねんで。ただ、現代の医学は人間の体を見る方法の一つであって、他にも人間の体を見る方法はあるよっていう話やねん。

これからの医学の全体像とは

川尻 あなたの頭を整理するために順々に説明しよか。まず、現代医療。現代医療のベースには基礎学問として解剖学や生理学があるねんな。

S はい。

川尻 基礎学問である解剖学や生理学っていうのは、ざっくり言うと、人間の体を細かくミクロの視点で見ていく学問や。その基礎学問に基づいて医療現場で提供されているのが現代医療やねん。

S はい。イメージとしてはこんな感じですね?

1.png

川尻 そうそう。で、ワシがこのブログで話しているような内容は、その反対。人間の体をもっと大きく全体として、マクロの視点で捉えて見るという話やねん。上のイメージに足すとしたらこんな感じやな。

2.png

S ああ、そうか。先生が話をしているのは、マクロの視点、大きな視点からの体の見方。現代医療の中に取り入れるというよりも、違う方向からの体の見方なんですね。

川尻 そうやねん。ミクロの視点とマクロの視点、両方があって医学だとワシは考えてるし、時代もだんだんそうなっていってるねん。

S ところで、上の図だと、マクロな視点の側が空欄ですね。ここにはカイロとか鍼灸とか自然療法とか、いわゆる代替医療と言われるものが入るんですよね?

川尻 まあ、そうやな。ただ、問題というか課題があるねん。代替医療はマクロの視点から体を見ているけれど、それを科学的に説明するときに、ミクロな視点の学問である解剖学や生理学で説明しようとしてしまっているのが現状やねん。というのも、マクロの視点から体を見る学問がこれまでは確立されてなかってんな。

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 現代医療には基礎学問があるけれど、代替医療にはない?

川尻 せやねん。だから、代替医療に携わる人たちが自分たちのやっていることを科学的に追求すると、ミクロな視点の基礎学問に当てはめるしかなかってん。

その結果として、代替医療の多くは、マクロの視点から見た療法にはなっていなくて、ミクロの視点の基礎医学をベースに提供されているっていうことが起こってるねん。

S ああ、ちょっと思い当たります。例えば、アロマテラピーで、「この症状を改善するにはこの精油を使いましょう」みたいな使い方をする場合はそうと言えますね? 症状を軽減するのに薬ではなく自然由来のものを使っているけれども、「その症状にはこういう精油」という考えは、ミクロの視点から体を見る現代医療と近いというか。

川尻 せやねん。だから、本当に統合的な医学を実現するためには、マクロの視点から人体を見る学問が必要やねん。で、実際、そういう流れが今、生まれてきているねん。

神経学と動作学

 マクロの視点から体を見る学問を確立しようという動きがあるのですか?

川尻 せや。具体的には「神経学」と「動作学」という2つの学問が考えられているねん。

4.png川尻 ここ10年20年でテクノロジーが進化したおかげで、神経学や動作学も発展して、これまで現代医療では「原因不明」とされていたことや、代替医療の現場では認知されていたけど科学的に説明できなかったことの多くが、神経学や動作学で説明できるようになってるねんな

S へー!

川尻 神経学っていうのは、言葉通り、脳を含む中枢神経や末しょう神経、全ての神経についての学問や。まあ、難しい話はここではやめておくけど、人間の体は脳を含む神経の電気的ネットワークによって全体がコントロールされているってことが神経学の大前提やね。

例えば、ワシがよく話す「痛みの科学」とか「脳の脅威のバケツ」も神経学やねん。こういうのは機能的MRIとか技術の革新によって人間の脳の活動状態をいろいろな形で観察できるようになって分かってきた新しい科学やねん。

S なるほど。もう一つの動作学っていうのは何ですか?

川尻 動作学は、旧ソ連や東ドイツで行われていたスポーツと動作についての研究から始まったもの。それをスポーツに限らず、人間の体を見るために発展させた学問やね。

動作学の前提は、人間は動いていることが正常である。生きているということは動いていること、動いてなかったらそれはもう生きてない。だから生きているものを見るときは、動いているものとして見ようっていう考えやね。

S うーん…分かるような、分からないような。

川尻 学生の時、生物の教科書で細胞のイラストを見たやろ? 

S あー、見ました、見ました。ミトコンドリアとか。こんなの。5.jpg

川尻 多くの人は細胞っていうとこんなイメージをすると思うねんけど、実際の細胞はこんな風に止まってなくて、ずっと動き続けてるねん。

 あー、そうか! 言われてみると当たり前ですけど、イメージとして動いているイメージは持ってなかった…。

川尻 脳もそうで、寝ていてもずっと電気信号がババババババって出続けてるねん。

通常の医療検査は、ある一瞬を切り取って行われるやろ? だけど、人間は本来は動き続けている動的なものだから、ある一瞬を捉えて静的にチェックするだけではわからないことがいっぱいあるねん。

人間は常に動いていて、周囲の環境と相互作用しながら変化していくものであるという捉え方で見る。それが動作学の前提や。

で、これもまた技術の進化によって、動いている状態を観察することが、前よりずっとできるようになってきているねんな。

S 面白い!

パラダイムシフトを起こそう

S 先生の話を聞いていると、医療従事者や治療家、セラピストは今すぐにでも神経学と動作学を学べばいいのにって素人の私なんかは単純に思っちゃいますね…。

川尻 ま、あなたは特にワシから洗脳されとるからね。

S ははは、洗脳。でも、すごく腑に落ちることが多いです。

川尻 ただ、人によってはこの話を受け入れるのは難しいだろうってことも分かるねん。っていうのは、神経学とか動作学って、人の体の見方としてはものすごく大きなパラダイムシフトやから。ワシだって今でこそこんなこと言っているけど、もともとは普通に体のこと勉強をしてきたから、最初はパラダイムシフトを起こすのにすごく苦労した。

S もしかしたら、これまでしっかり勉強している人ほど受け入れがたいかもしれませんね?

川尻 せやねん。でも、パラダイムシフトを起こさなあかん。

S 変化するのが生き物でもありますし?

川尻 せや。ダーウィンも言ってるやん、「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残るのは、変化できる者である」って。

常に動き続けて変化していくことは人間にとって当たり前やねん。だから、既成概念に縛られて現状から動かないのは生き物として自然でないねん。

S ここでいう既成概念は、ミクロな視点で体を見る現代医療ですね。でも、マクロな視点から体を見るという方法もあるし、それが神経学とか動作学といった科学的な学問として出てきているから、これまでの考えに縛られずに、新しい視点で人間の体を見てみることを始めてみよう、ということですね。

 

このブログでは、皆様からの質問や疑問を募集しています。今回のトピックに関する質問でも、川尻先生に聞いてみたいことでも何でもかまいません。ぜひコメント欄にご記入ください。個別回答はできかねますが、今後、ブログのトピックとして川尻先生にぶつけ、回答していただくつもりです!

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